Wind U115はゲーマーの選択肢となりえるか? N270 vs Z530
先々週ニュースとなったMSIの新ネットブックはWind U115、ハイブリッドストレージ&Atom Z採用、Wind U100の後継と呼ばれる新製品が発表されました。スペックを見るとN270+945GSEからCPUとチップ自体も変わって新鮮です。少し前に同じ構成のInspiron Mini 12という機種も発売されました。eMachinesシリーズというまた違うのもありますが、今回はU115に焦点をあてて、これは携帯ゲーム機として選択できるかどうか考えてみました。
以下は各資料を基に勝手に推測した物なので、実際の動作結果は違うことは多々ありそうだけれど。
N270とZ530はそもそも何が違うのか問題
Atomのプロダクトシート見てもさっぱり意味が??だったので、一般資料について↓あたりの情報を元に確認してみました。
仕様は見ての通りですが、コア写真などを見るとZ530は物理的に小さくなっています。そのおかげもあるのか、最大発熱量は下がっていて、本体がN270よりも熱くなるのを防いでくれます。また最低クロック(800MHz?)のときの消費電力が下がっています。とりあえず最大性能は変わりませんが、アイドル時などはバッテリー周りのためにエコロジー設計が進んだということでしょうか。
他の資料を含めてZ530の点で判ったのは
- 発熱量が下がることで排熱ファン回転に使う電力を減らせる、チップセットと合わせてファンレスも狙える(結果全体の稼動時間を長くできる)
- 主にアイドル時など(低クロック時)の消費電力が下がったことで、稼動時間を長くできる。
- 最大電圧が変わっていない点から、1.6GHz動作時(ゲーム中などね)の消費電力とCPU速度はN270との違いはなさそう。
- CPUの卸価格はZ530の方が現状20$程度高く、本体価格は多少高くなるかもしれない。
- Z530にはSpeedStep技術が省かれたが、チップセット側にクロック制御の工夫を何かしている?
- Virtualization Technologyが新たに加わったことで、VirtualPC 2007など仮想PCソフトの性能に影響が出るかもしれない。
といった辺りかな。
SCH-US15Wのグラフィックスコアは何者か
U115のチップセットのグラフィックスコアはGMA500と呼ばれています。チップセットにも低消費電力を目指したため、結構な電力を使っていたグラフィックスの個所にも手が入りました。情報源としては
から眺めました。これらのドキュメントとwikipediaを参照しながら判る点といえば。
- グラフィックスコアにはImagination社のPowerVR SGX535が組み込まれている。
- 動作クロックは(おそらく)160MHzに制限されていて、GMA950の400MHzと比べて明らかに低い。(アーキテクチャの違いがあるとはいえ)クロック数の違いにより描画性能面はやや期待薄。
- シェーダーモデル3.0のハードウェア機能を持っており、待望のハードウェアT&Lやハードウェア頂点シェーダーを内蔵。
- しかし動作クロックの面から、頂点計算はCPUソフトウェア処理を使用した方が総合的には速そうに思える。
- DirectX9L、OpenGL2.0に対応、GP-GPUとしての動作も可能な仕組みを持っている。
- H.264やWMV動画再生支援など、CPU負荷低減への面で945GSEよりもはるかに有利。
GMA500の動作クロックは112MHzと160MHzのモードを持っているのですが(SGX535自体は200MHzまで可能)、外部ディスプレイに出力時は160MHzモードが必要なので、U115はこっちじゃないかと予想。
また3DMark03でベンチマークをした人の情報によると、GMA950が約660スコアだったのに対して、GMA500は400スコア程度だったようでパフォーマンスはでてないね。
HDオーディオ
チップ型番の詳細に関しては不明だけれど、U100と同様Realtek製のHDオーディオの模様。DirectSound3DとEAX2まで使用できると思われます。
OS、ドライバーの出来がどうなのかが問題
多分この件で一番心配な項目。元記事にはOSが何になるか記載がまだありません。が、ハイブリッドストレージの特徴を押している以上8GBのSSDにOSが入ることになりますが、WindowsVistaだとこの容量はちょっとキツイのじゃないかな、と。ならばWindowsXPになる訳ですが、ここで疑問になるのがドライバーの完成度について。
SGX535は元々OpenGL向け用途が主流のコアのようだし、ファクトシートにDirectX9L(Vista用に拡張したDirectX9のこと、Direct3D9Exとも呼ぶ)対応と書いていてVista前提という点が見えます。実際今までのZ530+SCH-US15Wの機種がWindowsVistaだったのは、ULCPCの適用ルールもあるけれどWindowsXP用のドライバーが無かったからじゃないか、と思っています。今も正式なIntelからのSCH用ドライバーはVista版しかありません。WindowsXP用の準備はしているのでしょうが、その登場時期もまだ不明(完成しないとU115の発売も考えにくい)、Intelはドライバー更新はわりとサボリ気味な会社で、性能のためにガンガンチューニングしていく、という事もあまり考えられず。
月に一度は更新されていたVista版ドライバー更新は停滞しています。このReadmeを読むと、動作の問題点として以下のような注意書きがありますね。
- WinSAT(Vista標準のベンチマークツール)のスコアが高すぎる。 (性能的にはもっと低くないといけないのかな)
- 3DMark05、3DMark06のループデモの途中で停止する。
- 省電力用スクリーンセーバーのプレビュー表示時に時々ブルースクリーンになることがある。
- CrystalMark D2Dのスコアが標準VGAドライバーよりかなり低い (2Dゲーム、DirectDrawの性能は良くないのかも?)
- いくつかのDVD再生でフレーム落ちが発生。
- 外部ディスプレイのクローンモード時は回転機能が使えない。
などなど挙げられています。問題点としてはあまり表面化してないかもしれませんが、ちょっとSCH環境は未完成ぽい雰囲気が漂ってます。性能面はともかくブルースクリーンになったり、遊んでいる最中にそんなのになったらちょっと不安ですね。
Inspiron Mini 12のベンチマーク
まとめ
ゲーマーの点から見て、グラフィックスコア変更にともなったハードウェア頂点シェーダーの機能は魅力的です。これによって今まで動かないソフトをとりあえず動かすことはできるはずですが、実際の速度性能は現状のU100などよりは何割か低い、というのも悩ましいですね。CPU速度については変更がほぼ無いということで問題はありませんが、やはりグラフィックスのバランスがなー。
DirectX8世代あたりまでのゲームをできるだけ快適にしたいならU100、全般的に広くそつなく動いてくれれば良いならU115、という選択でしょうか。えろげだとどちらも性能的には大丈夫だとは思いますが、ドライバーの出来の心配でU110、U115は快適に動作してくれない(えろげで使われているDirectDrawが遅い)可能性も多いにあります。この辺りは工人舎SCやDellのInspiron Mini 12あたりの情報が参考に探してまわることになるかな。またWindowsXPが搭載されていると、ドライバー自体の安定度の不安もあります。
とはいえ初代Windの弱点だった稼働時間の弱さが強力に改善されている点は、本来のNetbookとしてあるべき姿の改良ですね。(このブログのちょっとズレてる)ゲーマー向け用途としては少々物足りない機種になってしまうかもしれませんが。
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