いかにして体験版から購入へつなげるか?

最近はiPhoneXNAで個人の方がゲーム販売をおこなえるチャンスが増えてきました。元記事は既に一年以上前の内容になりますが、そのような方たちに今でもこの内容は参考になるのではないかと思います。


XboxLiveアーケードで配信されているソフトには全て体験版があります。ソフト内で体験版から製品版に移行できるので、体験版の配信というよりもシェアウェアのような形態で配信している、という方が正しいでしょうか。つまりここで記述している体験版の内容は基本的に完成品でもあり、(例えばコミケで頒布されるような)開発途中のバージョンではありません。

そのXboxLiveアーケードのポートフォリオプランナー David Edery氏が、自身のブログで「体験版からソフト購入へつなげるために」幾つかのポイントを掲載しています。

まずダウンロード販売のソフトは「体験版機能がある事が全てで、それで楽しめない場合はお金を払うユーザはいません。」と言います。ただ、これはXboxLiveアーケードがVCのようにただの過去ソフトを販売する流通ではなく、オリジナルの新作カジュアルソフトの販売網である事が大きい部分ではあります。

そして重要な以下の7点について記載。これらはどれもが明白な事のように思えますが、実際の開発中には頭から追い出されてしまっている事も少なくありません。もちろんこれらが一番良い方法です!という訳でもないけれど、それでもパターンとして導入可能なことではありませんか。

■プレイヤーを混乱させたり、イラつかせることをしてはいけません。


実に明白ですか? 私がプレイした体験版では、そのトライアルステージが異様に難しすぎてどうすることもできず、体験版を終わりまで遊ぶことができませんでした。製品版はこれよりも易しくなるはずはなく、全てクリアできるとも思えません。なので、私はこのソフトを買うことはありません。

また別の例では、ゲームの内容説明が何もありませんでした。これはある人にとっては説明不要なゲーム内容であったかもしれませんが、大多数の人は何をしたらいいのか判らないでしょう。

■プレイヤーはすぐに楽しい部分に触れられるようにするべきです。


プレイヤーの多くはお楽しみタイムの前に20分や30分もゲーム内容の説明を受ける事を望んでいません。この問題はパッケージソフトの開発者に多く見られる傾向がありますが、お金を払ってパッケージソフトを買った後であれば、プレイヤーがチュートリアルをプレイするのは確実です。しかし私の経験上、体験版では最初の3分以内に面白そうに感じなければ、そのままプレイを続けるかどうか悩みます。


無料ソフトは手に取りやすいけれど、捨てることにも抵抗が少ないという事を忘れてはいけないですね。

■体験版は短すぎないようにしてください。


これは「短すぎるとはどれくらい?」という疑問が付く厳しいものですが、プレイヤーはその体験版で楽しい時間を過ごすことができなければ、製品版を買うことはありません。

短さの判断にはリサーチが必要になります。体験版を一度プレイした直後では、多くの人はそのまま製品版を買うことはしません。しかし再度プレイしたプレイヤーのことはきちんとリサーチする事は重要です。そのプレイヤーたちがどう感じたかフィードバックしてもらえる整備が必要です。また他の似たソフトの体験版を他社が出しているならば、それと比較してどうであったかもリサーチするべきです。


オメガファイブというシューティングゲームの体験版は、ステージ1の道中で突然終わるので、拍子抜けしたうえ短すぎる体験版と思えます。全体からの時間を考えると短くはないのですが、やはり2分程度のプレイでは購入するかどうか相当悩みました。結局購入しましたが、それはフレンドもプレイしていたし、XboxLiveアーケードの国内シューティングゲームの新作第一弾だったからプレイしてみよう、という部分が大きかったと言えます。

■体験版は長すぎないようにしてください。


また「長すぎるとはどの程度?」という問題はありますが、いくつかのセオリーがあります。時間の量(30分や1時間)だったり、ゲームステージの数、ボスの前まで、などです。これが正しい、といえる答えはありませんが、リプレイが重要なゲーム(たとえばボンバーマンなど)では特に注意する必要があります。このゲームでは1つのモードがプレイできますが、それが非常によく出来ているために、潜在的に何百時間もプレイヤーを楽しませる事が出来てしまう可能性があります。

もしプレイヤーがそのゲームに普通な興味程度なのでれば、この体験版で満足しきってしまう可能性があります。なのでプレイ時間かプレイ回数などで制限をかける必要があります。


ちなみにパッケージ品だと、私の個人的感覚では15〜20分くらいで初回の体験版が遊び終わる事を望みます。またボンバーマンの体験版は私もプレイしましたが、おそらくゲームの機能、アイテムは殆ど体験版にはいっていたのではないかと思います。ロストプラネットのネットワーク対戦体験版も、1ステージとはいえ良く出来すぎていたので、軽くこのゲームで対戦プレイしたいだけであれば充分ではないかと思うし、PC版HALOの体験版も時々遊ぶには充分なほど今でもプレイヤーがいますね。

■プレイヤーの好奇心を刺激しましょう。


体験版はどこか適切なポイント(ステージの最後や1時間後)で終わる必要があります。ゲームプレイのイベントを楽しんだ後、大きな山場の前で終わらせると良いでしょう。私が実際におこなった戦略ですが、ステージの最後で丁度巨大なボスが出現するイベントで終わらせてもらうように開発者にお願いしました。実際のプレイは拍子抜けするようなものだったかもしれませんが、私はその後の展開についての想像で頭がいっぱいでした。


1ステージの満足感を元に購入を促すか、寸止めの想像力をかきたてるか、どちらが良いかは難しい話です。

■アップセルメッセージ(製品版の紹介メッセージ)を表示しましょう。


体験版が終わるとき、画面のアップセルメッセージは顧客が見る最後のものです。様々な体験版では、ここで「より多くのステージ、たくさんのキャラクターの登場」などを表示します。あなたが作ったゲームを、他製品と比べてどのような違いがあるのかアピールするのです。
もしこれについての回答が用意できていないのであれば、少しでも何かヒントになることを考えてみませんか?

■ゲームの最も良い面を見せてください。


例えば、友人との協力プレイが、あなたのゲームで最も面白い内容であると確信しており、プレイヤーがそのモードを遊んでいないのであれば教えてあげてください。そのモードを彼らが偶然見つけることを願ってはいけません。メニューでそのモードを目立たせるようにし、アップセルメッセージでもその事について言及してください。

また別の例では、ステージの分割や途中プレイも考慮するべきです。ステージの後半をプレイしてほしいのであれば、その面白い部分をどうやってプレイしてもらうか考える必要があります。体験版は、ゲームの最初から始まらなければならない、という決まりはありません。またその最終的に楽しめるステージをプレイするために、プレイヤーに「レベルアップ」を強制しなければならない決まりもありません。


ARPGであるステージが面白いのであれば、その場からプレイできるセーブデータを用意している、というようなイメージでしょうか。とにかく「ここサイコウなんだ」という部分を遊んでもらえ、ということですね。

最後に、やはり顧客を理解して、彼らの期待する物であるかどうかの判断に時間を使うよう注意しています。もしレースゲームを作り、それをレースゲームが大好きな人たちに買ってもらいたいのであれば、その人たちの心に訴える何かを考える必要があります。レースゲームが大好きな人たちは、既に良いレースゲームも持っているはずで、その人たちにどのような体験が与えられるのでしょうか?
「格安の値段でゲームプレイできます?」それは届かないかもしれません。数百円から数千円で買えるソフトかもしれませんが、されど数百円か数千円でもあります。彼らが既に何を持っていて、それと比較し何が提供できるのか考えなければいけません。

ダウンロード販売は単にパッケージゲームを格安で販売する物ではなく、何か異なった物を提供する必要があります」と言っています。(そして格安で提供したいのであれば、販路を見直すべきです)また、この元記事の以下のコメントが興味深いと思います。

「プレイヤーに1分もアップセルメッセージを見させないでくれ」と言いたい。デモが終わってもう一度プレイしたいのだが、そこのアップセルメッセージをスキップできないために、数度目でプレイすることを止めてしまった。(スキップできないとしても、せめて1度目のみだろう)


この「アップセルメッセージが長すぎ」には賛成。私らはいつでも電源を切ることができるのに、どうしてメーカーは再プレイすることを止めるのだろう。体験版をプレイしてほしくないなら最初からリリースなどしなければ良いのに。


アタリの製品はデモが短過ぎる例です。プレイがあまりにすぐに終わるので、そのゲームとは一生縁が無いだろうと思います。アーケードゲームの2分は、ほとんどの人は夢中になる時間としては短すぎですね。


またPopCapという会社は、以前カンファレンスで「100対10対1の法則」という物も自社のサービスを長年続けた上で発表しました。それは「100人がサイトに訪れれば10人がダウンロードをしてくれる。その10人の中から1人が買ってくれる」というバランスの話です。
その数少ない顧客を、体験版からお金に換えるためのチャンスを逃してはいけません。どのようなレビューや記事があろうと、「欲しい」と最も願うタイミングはプレイヤー自身がゲームを体験したとき、それは体験版をプレイしたその時には適わないということです。

XNAゲームクリエイターズクラブの現状は「体験版状態は8分後に強制終了」というやや酷い物ですが、この数分間にどれだけ詰め込むのか、という点が重要になってくるでしょうか。逆にiPhone OS3.0では体験版からそのまま製品版へ、というアプリ内決済を作ることでより良い流れが作れると思います。